【ご質問】
先日、父が亡くなりました。
父は複数の賃貸不動産を持っており、相続税がかかります。
ここで、賃貸不動産の相続税評価について教えてください。
父が所有していた不動産に貸家があるのですが、父が亡くなった当時は空家になっていました。
インターネットで調べてみると、空家になっている貸家の土地は貸家建付地の評価ではなくなり、一切減額されないということを知りました。
本当でしょうか?
貸家を建てれば相続税対策になると不動産業者から言われたため、空き地にしていた土地に建物を建てました。
もし、一切減額されないのであれば話が違うと思います。
【税理士長嶋の回答】
お父様の相続があったときに貸家が空き屋であれば、貸家建付地の評価とはならず、減額されない100%評価される自用地になる可能性が高いです。
ただ、空家であったのが一時的であると判断されれば貸家建付地の評価ができる可能性が出てきます。
状況により取り扱いが異なりますので、検討が必要です。
【貸家建付地の相続税評価は賃貸割合を考慮する】
貸家として使っている土地の相続税評価は、貸家建付地という評価になります。
貸家建付地の相続税評価は次の算式により計算します。
「貸家建付地の相続税評価額=自用地評価額-自用地評価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合」
この算式により、貸家建付地の相続税評価は賃貸割合を考慮することがわかります。
一般的な話として、アパートやマンションなどの賃貸不動産を持っていれば、土地の評価は2割引になるといわれます。
この2割引というのは、入居率100%のときにはじめて2割引で評価することができることを意味します。
もし、賃貸不動産に空き屋や空室があれば入居率100%ではありませんので、実際に貸していない分だけ減額することができません。
【空室を埋めることが相続税対策になる】
賃貸不動産に空室があるということは、日常の資金繰りも大変です。
それに加えて、賃貸割合が下がることで土地の相続税評価額が増えてしまうことで、相続税の増税になることも問題です。
空室を埋めることは、資金繰りの対策にもなり相続税対策にもなりますので、とても重要なことです。
賃貸している不動産がアパートやマンションであるときは、貸している戸数が多いので一室や二室が空室になっていてもさほど影響はありません。
ところが、一戸建ての場合は貸せるのが一戸ですので、
・入居していれば減額できる
・入居していなければ減額できない
という結果になってしまいます。
貸家建付地として相続税評価を減額できるかどうかは、相続があったときに実際に賃貸しているかどうかの一点です。
そのため、一戸建ての場合は空室対策がとても重要になります。
【一時的な空室であると認められれば減額することも可能】
賃貸不動産に空き屋や空室があればその部分は一切減額できないのか、というとそうではありません。
空室になっている部分が、「継続的に賃貸されてきたもので、相続があったときに一時的に賃貸されていなかったと認められる」ときは、賃貸されているものとして貸家建付地の相続税評価を行うことができます。
このとき、一時的に賃貸されていなかったと認められるかどうかは、次のような項目を検討し総合的に判断されます。
(1)各独立部分が相続があった前から継続的に賃貸されてきたものかどうか
(2)賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われたかどうか
(3)空室の期間、他の用途に供されていないかどうか
(4)空室の期間が相続があった前後1ヶ月程度であるなど一時的な期間かどうか
(5)相続があった後の賃貸が一時的なものではないかどうか