【ご質問】
昨年、父が亡くなりました。
相続人は、母と子供の私です。
父の生前、母は父の預金口座から現金を引出し、私の預金口座に預けました。
父に相続があったときは預金口座が凍結され、預金が引き出せなくなるという話を聞いたためです。
父の預金口座が凍結されると、病院への支払いや葬儀費用の支払いが不安になりました。
ここで、贈与税がかかるのではないか?という心配があります。
父の預金口座から引き出した現金は、私に対する贈与になるのでしょうか?
その後、父が亡くなりましたので、父の預金口座から引き出した現金から病院の費用や葬儀の費用を支払いました。
少額ではありますが、現金が残っています。
この残った現金は、私に対して贈与があったと考えるのでしょうか?
私としては、父に万が一のことがあったときのための支払いに備えるために「預かった」という感覚です。
そのため、預かっている現金には一切手を付けていません。
【税理士長嶋の回答】
お父様の預金口座から現金を引き出したとしても、贈与にはならないと思われます。
また、引き出した現金から実際に病院や葬儀などへの支払いに充てた残りの現金があったとしても贈与ではなく、相続税の対象になると思われます。
【預かっただけでは贈与にはならない】
そもそも、贈与とは何か?ということをまずご理解いただく必要があります。
あるものを贈与するときは、登場人物が必ず2人出てきます。
・財産をあげる人
・財産をもらう人
です。
贈与は「契約」になりますので、
・財産をあげる人が「あげます」
・財産をもらう人が「もらいます」
という意思表示があって、はじめて贈与が成立します。
ご質問のケースでは「もらったのではなく、預かっている」とのことですので、そもそも贈与は成立していません。
さらに、お父様は「あげた」という意思を持っていない可能性があります。
贈与税は、贈与により財産を取得した人に対して課税される税金です。
そのため、贈与が成立していなければ、贈与税がかかる根拠がなくなりますので、贈与税は当然にかかりません。
【相続があった日の現金残高は相続財産になる】
お父様から預かった現金は、単に子供さんの名義の預金口座に預け入れられたにすぎません。
そのため、名義は子供さんだったとしても、実質的な所有者はお父様ということになります。
このようなことから、子供さん名義の預金口座に預け入れられた現金は、お父様の相続財産と考えられます。
相続税を計算するときは、
・相続があった日の現金残高は、相続財産としてプラス
・相続後に支払った病院や葬儀の費用は、債務控除として相続財産からマイナス
をすることになると思われます。
【相続税申告Q&A参考ブログ】
・父から母に名義変更した預金に相続税はかかりますか?(2012.12.04)